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NSTの取り組みを通じて感じる診療連携のメリットにはどのようなことがありますか

渡辺:NSTチームが立ち上がる前は各診療科で個別に治療を実施していたため、集学的な治療ができていたとはいえず、悩みながら診療を行っていました。当時は栄養療法も発達途上であり、内科的治療の開発も進んでいなかったため、多くの患者さんで栄養状態が悪く、治療に苦慮していました。
NSTができてからは、例えば、栄養状態の評価について腕の周りを測定する方法など、我々が知らない方法を学び、取り入れることができるようになり、診療の幅が広がったと感じています。
特に、小児外科では、我々消化器外科とは違うカテーテル管理の手法を取り入れており、勉強させてもらいながら、成人の患者さんの診療に応用することで集学的に治療を行えるようになったと感じています。

中村 恵美 先生

工藤 博典 先生

稲村:栄養評価に使用する検査項目は先生方が日常的にオーダーしないものもあるので、NSTでのつながりがある臨床検査技師に問い合わせてオーダーや検体採取の方法を教えてもらっています。歯科医師などにも関わってもらっていますから、困ったことがすぐに解決できる強みがあります。
東北大学病院は大きな施設ですので、困ったときに、誰に聞いてよいかわからないこともありますが、このようなチームがあるおかげで、効率よく業務を進めることができていると感じています。

和田:我々小児外科も、成人の科ではどのようなことが問題となるのか詳しく知らない部分がありますので、情報を共有することで学ぶことが多数あります。

中村:医学的な知識や治療方針については私からアドバイスすることができますが、生活に関することまですべてを医師一人で対応していくには限界があります。そのため、このような多職種連携の形をとり、いつでも気軽に相談できる体制があるというのは非常に助けになっています。患者さんも、一度相談するだけで終わりではなく、ずっと継続して相談に乗ってもらえるということで、非常に満足されている方を多く見受けます。

工藤:カンファレンスという枠組みも大切ですが、個人同士の面識という点も非常に重要だと感じます。一つのきっかけを持つ中で相手に対して真摯に接しますし、相手も真摯な対応をしてもらうことで関係が深まり、次の新たな連携が生まれてきます。もちろん、何か相談されることがあれば、私たちも快く対応することで新たなネットワークができていくと思います。

チームで腸管不全の患者さんをサポートしていくときの強みとはどのようなことでしょうか

患者さんごとの特性に寄り添った栄養指導

佐藤:腸管不全の患者さんは診療してもらえる施設が少なく、これまでは(他施設では)専門的な栄養指導を受ける機会も少なかったのですが、当施設に来院されるようになってからは、患者さん、ご家族は、食事の内容も含め、様々な部分で相談できる窓口が増えたと非常に喜んでもらっているお話を耳にします。

工藤:患者さんは、管理栄養士の方に栄養の話以外にも、不意に違う悩みや状況のことをお話しされることもあります。普段からチーム内でコミュニケーションをとっていると、そのようなこともチーム内にフィードバックしてもらえるので、患者さんが本当に思っていることや悩んでいることを知る機会となり、診療にも大きく役立っています。

大竹:患者さんによって必要な生活支援の内容は違いますし、家族状況のことで言えば、例えば上にきょうだいがいるとか、下にきょうだいができたとかで、食事を含め生活スタイルが変わってきます。また、学齢期であれば学校での食事(給食)をどうするか、未就学児であれば幼稚園や保育園でどう対応してもらうかなど、年齢や発達段階によっても必要な支援のポイントが異なります。

和田:そのような中で、学校の受け入れや就職など、社会に復帰するためのバリアは様々な局面に存在しています。そのバリアを少しでも外していくためには、医師だけではできないこともあるので、多職種で連携しながら一緒に考えていかなければなりません。

就学・就労支援

佐藤:小腸移植後に学校に戻る場合には、薬の服用や食事の制限、運動の制限など、守らなければならないことが多数あります。そのため、患者さんやご家族だけではなく、学校の保健の先生や担任の先生にパンフレットをお渡しして説明をしたり、必要に応じて直接、相談することもあります。また、学校行事の際の注意点や、何かあった場合の対応についてもお伝えしています。

大竹:障がいがある子も医療的ケアが必要な子も、その能力に応じて等しく教育を受ける権利があり、できる限りそうでない子どもたちとともに教育を受けられるよう配慮する必要があります。実際は、やむを得ず希望どおりにいかないという現状もありますが、可能な範囲で少しでも希望に沿うかたちに近づくよう、声をあげていかなければと思っています。ご家庭によっては、どうしても普通学級でみんなと一緒に、というお考えもあれば、特にこだわりはない、特別支援学級でも良いなど、希望はさまざまですので、まずお考えやご希望を確認していくことが重要です。

佐藤:就労に関しては、就職活動の際に、どのように自分の病状について説明すればよいかや、どのような支援が必要で、どのようなことをやっていきたいかなど、面接のための事前練習などの支援を行っています。それまでは親が様々な支援をしてくれていた中で、今度は社会に一人で出ていかなければならないというときには、必要となる支援が変わっていきます。体調がすぐれずに休む場合も、どのように上司に説明すればよいかなど、医師には相談しにくいことなど、色々とお話を聞いて、アドバイスしています。

和田:患者さんの就労に関しては、身体障碍を持っている患者さんが多いのですが、制度が十分に対応しきれていない部分があることも否めません。職場で自分の病状をうまく説明できず、体調を崩すこともあります。内部障害はハンディキャップの中でも周囲から見えにくい障害なので、なかなか社会の理解が進みにくいということもあります。

生活習慣としての食

稲村:腸管不全状態の患者さんは絶食を余儀なくされる期間が長いので、例えば小腸移植をしていざ食事を開始しても、量や食事の内容など、どのように食べたらよいかがわからないという問題が生じます。腸管の状態に合わせつつ効率よく栄養が摂れるよう、食品の選び方や食べ方などのサポートを行っていきますが、生活の一部として正しい食習慣が身につくような教育的配慮に加え、食に興味を持ち「食事が楽しい」と思ってもらえるような関わりを心掛けています。

和田:医師から注意するだけではなく、様々な職種のメンバーが多方面からアプローチして、患者さんの生活や内心、考えていることなどに寄り添い、話をしていくことが患者さんの心に響かせる有用な方法の一つだと考えています。

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